映画「シチリアーノ裏切りの美学」レビュー&解説
映画「シチリアーノ裏切りの美学」レビュー!&解説
目次
映画「シチリアーノ」をみて参りました!
札幌の映画館は今日から公開だったのですが、朝の回から混んでいました。
映画 シチリアーノ あらすじ&レビュー
「シチリアーノ 裏切りの美学」は、イタリアマフィアの内情を告発したトンマーゾ・ブシェッタの半生を描く。
映画はこちら→「三分で学ぶ!トンマーゾ・ブシェッタ」の〝第二次マフィア戦争〟辺りから始まります。
あらすじを知りたい方、映画のストーリーがよく解らなかった方は「三分で学ぶ!トンマーゾ・ブシェッタ」を見ていただけると解りやすいと思います!
本作はゴッドファーザーを思い出させる優雅で騒々しいパーティーシーンから始まり、その後は淡々と〝第二次マフィア戦争〟を描いていきます。
各々のキャラクターが次々と殺されるシーンは、殺し方はポピュラーながら、〝殺害人数が画面下にカウント表示される〟〝銃撃により鏡が次々と割れる〟など映画的に面白く魅せています。
映画的に魅せながらも、史実に忠実。
しかしながら、ある人物が酸で溶かされるなどグロテスクになりそうな部分はカットされていて、バイオレンスシーンも見易いものとなっています。
「拷問シーンがヤバい、殺しのシーンがグロい」と評判を聞いていたので思ったほどではなかったかなと。
暗殺シーンは多いが、派閥争いなどは基本的に解りづらく、駆け引きなどもほとんど描かれていないのも少し残念。
しかし、小難しい事は抜きにブシェッタに焦点を当てたからこそ、彼の後悔や苦悩がよりリアルに描かれています。
また、ジェットコースターのようにドンドン抗争が加速するスピード感も現れている。
「シチリアーノ」は基本的に小難しい説明は抜きで進行する映画。
悪い意味ではなく、ファルコーネとの友情が芽生えるシーンも言葉を抜きに〝タバコ〟〝表情〟〝不器用なやり取り〟で表現しており「さらば友よ」や「ミッション 非情の掟」のようなハードボイルドな仕上がりとなっている。
鏡が割れるシーンや2丁拳銃での銃撃もジョニートー作品っぽかったですね。
サルヴァトーレ・リイナ
本作はトンマーゾ・ブシェッタが主役ということで、サルヴァトーレ・リイナがかなり悪役的に描かれています。
史実には忠実ながら、リイナが逮捕された際に「そうだ、私がリイナだ。おめでとう」と言うなど、リイナが格好よく見えてしまいそうなシーンはカットされている。
法廷での対決シーンもしかりで、史実に忠実ながらも微妙にリイナが格好よくならないような描き方をしている。
さらにリイナは実際にはクーポラを支配した実力者でしたが、その面もカットされて「いいなりだ」という説明が入れられていた。
映画的には勿論、悪役なので当然なのですが、どうせならもっと〝とんでもなく凶暴で残忍なラスボス〟として脚色するのもありだったのかなと思います。
格好いいリイナについては「シチリアーノ 裏切りの美学関連作品」にオススメのドラマがあるのでご覧ください。
また、法廷シーンに登場していたルチアーノ・リッジョも興味深い人物なので、ぜひ「三分で学ぶ!ルチアーノ・リッジョ」をご覧ください。
「物事には3つの側面がある。
私のもの。あなたのもの。そして真実」
ブシェッタの敵の生い立ちや境遇を知れば、さらに「シチリアーノ」の世界観に奥深さを感じること間違いなしです!
トンマーゾ・ブシェッタの家族
家族とレストランに行った際に、ギター引きが寄ってくるシーンなどは史実に基づいており、Netflixドキュメンタリー「裏切りのゴッドファーザー」でブシェッタの家族が語っています。
実際には、怪しまれないようにしばらく食事をしてから急いで逃げたそう。
パンフレットには〝自責の念に苛まれレストランを出た〟とあるが、そうではなく脅迫、「お前を知っているぞ」というメッセージだったのだ。
ブシェッタはこれについて「食べ終わる頃には、待ち伏せされると確信した」と話しています
作中ではあまり描かれていませんでしたが、〝イタリア国内ではブシェッタと家族を守りきれない〟という理由から、家族はアメリカで証人保護を受けていました。
妻が働きに出ていたのも事実で、ブシェッタは家族を養えない事から、かなり落ち込んだそう。
映画では登場しませんが、リイナの家族はのうのうと暮らしており、ブシェッタの家族は今も逃げ続けているのが、なんとも考えさせられます。
映画は付け狙っていた男をブシェッタが射殺する回想シーンで幕を閉じます。
現実では、今度はブシェッタが付け狙われる側に回るというなんとも皮肉な終わり方でした。
その他のキャラクターのその後
ガエターノ・バラメンティは2004年に刑務所で死亡。
息子はマフィア稼業を続けており、今年また逮捕された。
サルヴァトーレ・コントルノ
ブシェッタと共に証言した彼です!
映画で描かれたように、コントルノは帰国し復讐を目論んだ。
驚くべき事にファルコーネ等、イタリア政府がこの復讐を支援。
しかしコントルノは逮捕され、計画は明るみに出てしまう。
これによりフォルコーネは一時、疑惑の人となりバッシングを受けた。
最終的にコントルノはマフィアの世界に戻り、麻薬密輸での逮捕を繰り返している。
裏切りの美学とは
度々、マフィア史に登場する裏切り者。
有名所では映画「バラキ」でも描かれた〝ジョセフ・バラキ〟。
サルヴァトーレ・グラヴァーノやヘンリー・ヒル、その他の多くのマフィアが、己の保身や減刑の為に仲間を売ってきた。
法廷に限らず、保身の為に仲間を売るマフィアも多い。
しかし、ブシェッタはそういった類いの裏切り者ではない。
ブシェッタは、「私は裏切り者ではない。 信じていた組織が変わり落胆しただけだ。 私がマフィアについて教えよう。」と語っている。
ブシェッタは誇りを守るために、苦肉の策として証言する道を選んだのだ。
作品を見終わり改めて〝裏切りの美学〟という副題の素晴らしさを感じた。
映画「シチリアーノ」のパンフレットのレビュー
売っているとは知らなかったので、売店で発見し驚いてしまいましたw
内容は有識者の語る〝映画とは〟やホームページにある相関図や監督のインタビューなど、少々肩透かしなページがあるのも確か。
映画ファンへのパンフレットではあるが、マフィア映画ファン向きのパンフレットではない気もしてしまう。。
しかし、素晴らしい批評も載っているし、写真も多め。
記念として残しておきたい一冊になっている。
シチリアーノ 裏切りの美学 まとめ
色々と書きましたが、マフィア映画で、しかもこんなにコアな内容の映画が、劇場で見られるのは貴重です!
去年はアイリッシュマンくらいだったような。。
美しい映像とリアルなマフィア像を描き、人生とは?裏切りの美学とは?という問いを投げかけてくる作品です!
札幌の劇場では私の作った冊子を配布してます。無料なのでどうぞw
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