マフィア 裏切りの報酬 レビュー
マフィア 裏切りの報酬 レビュー
今回は書籍「マフィア 裏切りの報酬」をレビューしていきます。
あらすじ
ジミー・フラチアノが政府側の証人になった夜、マフィアのボスたちは誰ひとり、枕を高くして眠れなかった。
コーザノストラの正式メンバーとして、ジミー・フラチアノは、マフィアの最高機密に通じていた。
ロサンゼルスファミリーの兵士から出発し、支部長、ボス代行と階段を昇ったフラチアノは、競馬のノミ屋、賭博、労組相手の不正、ゆすり、ポルノの売買など、地下組織と結びつく、およそありとあらゆる犯罪活動に加わったが、カリフォルニアにおけるマフィアの殺し屋ナンバーワンとあう評判と勝ち得ていた。
フラチアノはこれまで転向したマフィアのメンバーとして最高位にあり、過去2年間、全米の裁判所で証言するたびに、新聞ではセンセーショナルな大見出しとなった。
著者のオービッド・デマリスはベテランの事件記者であり、ベストセラー作家だが、本書を執筆するためにフラチアノの話を直接聞くという前列のない機会に恵まれた。
デマリスはまた、警察の電話盗聴記録、張り込みの報告書、裁判所や刑務所の記録なども参照した。
その結果生まれた本書は、アメリカ組織犯罪に関してこれまで書かれた本の中では最も重要なものとなった。
「マフィア 裏切りの報酬」には、フラチアノ個人がかかわった殺人11件が詳述されている。
また彼が内情を熟知していた20数件の殺しについても触れている。
また、CIAとマフィアが組んだカストロ暗殺計画「マングース作戦」の真相も語られ、さらに俳優のフランク・シナトラやケネディ元大統領、ジャクリーン・オナシス夫人ら多彩な人士たちも登場する。
“書籍表紙より”
レビュー
この本では上下二冊に渡ってフラチアーノ(フラチアノ)の生涯を描いている。
あらすじは少々誇張されている気もするが名作であることは間違いない。
上巻冒頭はフラチアーノが著者のデマリスと話している所から始まり、その後フラチアーノの幼少期から証人に寝返るまでを描いている。
作中ではフラチアーノを“最後のマフィア”と呼び、あらすじでは“最も重要な一冊”と位置付けているが、読後の印象はだいぶ違う。
大物マフィアの自叙伝を想像されるかもしれないが、この本で描かれるのは“成り上がろうと努力し続ける男の悲劇”である。
※以下、多少のネタバレあり
フラチアーノは幼い頃からアメリカンドリームを夢見てあくせく働く。
殺人を引き受けたり、詐欺を働いたり、合法ビジネスを始めたり、カジノを建設しようとしたり。
次から次へと現れる千載一遇のチャンスにフラチアーノと同じく胸を踊らせ、一喜一憂できる事は間違いない。
ただし“一喜一憂”である。
フラチアーノのアメリカンドリームは必ず、目前まで来ると崩れ去ってしまう。
マフィアの妨害、不慮の事故、警察の介入など様々な理由でフラチアーノの夢は奪われ、年だけを重ねてしまう。
だが、ここが魅力でもある。
アグレッシブで諦めないフラチアーノが好きになることは間違いなしだ。
その他の魅力
フラチアーノのもう一つの魅力はその人間味にある。
彼は時には涙を流して失敗を悔しがるし、まんまと詐欺師に騙されたりもする。
成功すれば大盤振る舞いし、また一文無しに。
ダメダメな生活にも見えるが、友情に厚く女に弱い。
アルコール中毒の女房に手を焼き、うんざりしながらも捨てられない。 などフラチアーノの親しみやすい人柄はとても魅力的である。
加えて本作には豪華すぎるマフィアの面々が登場する。
一部を挙げると
・バグジー・シーゲル
・ラッセル・ブファリーノ
・トニー・スピロトロ(映画カジノのトニー)
・マイヤー・ランスキー
・ミッキー・コーエン
・カルロ・ガンビーノ
・トニー・アッカルド
フラチアーノは彼等と時に手を組み、時に敵対しながらマフィア界を渡り歩いて行く。
ちなみに映画「アイリッシュマン」にはフラチアーノとラッセル・ブファリーノが会話をするシーンが登場するのだが、その様子も描かれている。
まとめ
結果的にいうとこの本はめちゃくちゃ面白い。
“ゴッドファーザー”のようなマフィアにはほど遠いが、フラチアーノは自分なりの信念を持っており、その生きざまはかなり興味深い。
また後半には役職に捕らわれず、尊敬されるフリーのマフィアを目指すシーンがあり、その際のセリフがとても良い。
「奴らは奴らの道を行けばいい、俺は俺の道をゆくんだ」
他にも深いセリフが多く登場するので、ぜひ探してみてください