ホッファの遺体を捜索
ホッファの遺体は！？
7月、ニュージャージー州の埋立地付近でFBIは、数週間にわたり元チームスターズのリーダー、ジェームズ・ホッファの遺体の捜索を行った。
デトロイト支局の広報担当者であるマラ・シュナイダー特別捜査官は、用意された声明の中で、こう述べた。
「捜索中に証拠価値のあるものは何も発見されなかった。
現場での更なる活動は予想されませんが、FBIはホッファ氏の居場所を突き止めるため、あらゆる有力な手がかりを追い続けます」
FBIは、ホッファが消えた1975年7月30日以来、捜査を続けてきた。
初の捜索があったのは、失踪同年の11月。
FBIはマフィアの情報に基づいて、ジャージーシティのゴミ捨て場周辺を探したが、何も見つからなかった。
それから2000年以降、捜査官はカリフォルニア州ガーデナの元カードカジノ、ミシガン州ハンプトンの郊外プールの下、ミシガン州ミルフォードの農場、ミシガン州ローズビルの裏庭、ニュージャージー州のサッカースタジアムの取り壊し現場（マフィアの情報提供者の話から）、ミシガン州ブルームフィールドの自宅内を掘り起こした。
その他、ホッファは樽に詰められてフロリダのエバーグレーズに捨てられた（別のマフィアの密告者による）、彼の体は溶けて鉄になり日本に運ばれた、などの信憑性の低い報告もホッファ伝説の一部となっている。
ニュージャージー捜索の起源
FBIにニュージャージーの埋立地を再び捜索するように説得したのは、調査ジャーナリストでホッファの専門家であるダン・モルデア氏の働きかけによるものであった。
モルデアは、ホッファの死体が本当にそこにあり、FBIが何らかの形でそれを見逃しているのだと確信している。
彼の疑問は、ブラザー・モスカート・ダンプ、別名PJP埋立地であったプラスキー・スカイウェイ陸橋の下に隣接するその場所をFBIが正確に調査したかどうかということである。
この場所は、フランク・カポラが、埋立地のマフィアとつながりのある共同経営者である彼の父ポールが、ホッファが行方不明になった直後に金属ドラムに埋めた場所を見せたことがあると主張している場所だ。
とはいえ、FBIが懸命に捜索したものの、遺体は見つからなかった。
埋立地の物語に込めた作家の思い
1970年代半ばからホッファについて書いてきた作家のモルデア氏は、ホッファの遺体がニュージャージーのどこでどのように処理されたのかを研究している。
2020年にフランク・カッポラが亡くなる前、モルデアはホッファの墓とされる正確な場所に立たせ、そこで写真撮影のポーズをとらせた。
その後、民間調査員の一団とFox Newsの別チームは、地中レーダー（GPR）装置を使う会社に依頼して、土の奥深くに異常がないかどうかを確認。
モルデア氏によると、両社ともフランクの話を裏付けるような証拠の可能性を見出したという。
しかし、FBIは、GPRの測定値が彼とフォックスの測定値を確認できなかったので、FBIはそこを掘らないことに決めたと言った。
バーンステイン氏は、FBIがニュージャージー州の場所をもう一度捜索するとは考えていない。
「FBIが再び調査を行うことは素晴らしいことだが、それは彼らの本意ではない。
このような証拠があるのに、その地域の一部で令状が取れて、他の地域では取れないというのは信じがたいことです」
モルデア氏がホッファの所属するチームスターズユニオンに興味を持ったのは、1974年12月、大学院生だった24歳の時である。
それがきっかけで、ホッファの失踪直前にNBCニュースやウォールストリート・ジャーナル紙でホッファの調査をするようになった。
以来、モルデアはホッファに関するあらゆることを調査する一流のジャーナリストとして活躍している。
1978年に出版された『ホッファ戦争』は、彼の代表作だ。
そして、ホッファはニュージャージー州の埋立地の近くに埋められているというモルデア氏の説は、有力視されるようになった。
ホッファが行方不明になって数ヵ月後の1975年11月、FBIはニュージャージー・マフィアのカポ、アンソニー・”トニー・プロ”・プロベンザーノの仲間、ラルフ・ピカルドが、ホッファの死体はPJP埋立地に埋められたという情報を確認した。
モルデアの考えでは、トニー・プロは、1975年7月30日の午後、アンソニー “トニー・ジャック “ジアカロンと、マフィア仲間のレナード “リトル・レニー “シュルツと、デトロイト郊外のマチュスレッドフォックスの会合に彼を誘ってからホッファを殺害するようにジェノベーゼファミリーの殺し屋サルバトーレ・ブリグリオに命じた。
そしてホッファが殺された後、トニー・プロがホッファの死体を入れた樽をトラックでデトロイトから何百マイルも運んでPJPに運び、処分するよう命じたと推測している。
この埋立地は、ニューヨークのジェノベーゼファミリーの兵士、フィリップ “ブラザー “モスカートも経営に加わっていた。
彼のあだ名は、 “ブラザー・モスカート・ダンプ “であった。
彼ならドラム缶を埋めるのは、朝飯前だっただろう。
モルデアは、2019年から2020年にかけて30時間の聞き取り調査を決行。
フランク・カッポラが、モスカートが彼にホッファの遺骨が入ったドラム缶を埋めるよう命じたと話したのを記録した。
カッポラは、当時、自分は17歳だったと語った。
その時、彼はホッファの遺体をドラム缶から取り出し、別のドラム缶に頭から入れるのを見ていたという。
それから父親がホッファの遺体を運んできた人たちと口論になったと話した。
彼らはポールに、ホッファを埋立地の特定の場所に埋めるように指示した。
しかし、ポールは、その場所が警察の監視下にあることを恐れ、夜、埋立地のすぐ外にある別の場所に戻ったとフランクに話した。
バックホウで大きな穴を掘り、その底にホッファの樽を沈めた。
その上に他の樽を最大15個まとめて落とし、全体を土と瓦礫で覆い、地中のどこかに目印を残したという。
ポールがホッファを埋めたという場所は政府の所有地で、現在は公園や自然保護区として使われている。
一方、バーンステインは、ホッファの殺害と死体処理について、別の見方を示した。
彼は、ニュージャージーのジェノベーゼ一ファミリーの仲間であるトニー・プロは、ホッファ抹殺の陰謀において小さな役割を果たしたに過ぎないと考えている。
殺人計画の中心は、デトロイト・マフィアの上層部であるアンソニー・“トニー・ジャック”と、ヴィトー“ビリー・ジャック”のジアカローネ兄弟。
彼らは、チームスターの会長フランク・フィッツシモンズからキックバックされる組合資金に満足しており、ホッファが1976年に再び組合会長に立候補しようとしていると聞くのを嫌った。
そして、ホッファは組合員に対してある種の脅迫をしており、FBIの情報提供者であるという噂もあった。
またわホッファは、組合のトップに返り咲くには政府の後ろ盾が必要で、そのためには反腐敗を掲げて出馬するしかないと考えた。
そして、ジアカローネはホッファの殺害を決めた。
火葬の可能性
また、バーンスタイン氏は、遺体はデトロイト地区で焼却されたか、火葬にされたと考えている。
ホッファとトニー・プロは当時仲が悪かったが、ホッファは会長に当選するために、組合員の間でマフィアが持っている投票権を必要としていた。
ホッファは「チームスターを乗っ取るという強迫観念にかられ」、プロベンザーノ、アンソニー・ジャカロン、シュルツとの危険な会談に同意したとバーンステインは言う。
また、彼はこう話す。
「デトロイトのFBI捜査官の間では、盗聴器や情報提供者の話から、ホッファを殺したのは地元のマフィアのアンソニー・”トニー・パル”・パラッツォーロだということで一致していると」
ホッファはその後、デトロイト・ファミリーが支配する近くの清掃会社か葬儀社のいずれかで「焼却、火葬」されたようだと、彼は言った。
それから、ジャカロン兄弟は、1970年代から2000年代にかけて、当局を混乱させ、ホッファ殺害の痕跡を消すために「偽情報キャンペーン」を展開したと、彼は付け加えた。
また、バーンステインは、FBIがホッファに何が起こったかを調べるために、2011年から2012年に亡くなるまで88歳のヴィト・ジャカローネが住んでいた老人ホームに盗聴器を仕掛けたのだと話す。
しかし、結局ホッファとその遺体に関する情報は何も得られなかった。
