書籍 シチリアマフィアの世界を紹介&レビュー
書籍 シチリアマフィアの世界を紹介&レビュー
今回は書籍「シチリア・マフィアの世界 」を紹介していきます。
本書は皆さんが、「マフィアの本」と言われて想像するものとは少し異なると思われます。
主な内容としては
〝マフィア誕生の成り立ち〟
〝シチリアの大土地所有制度〟
〝シチリアでの民衆運動〟
〝冷戦とシチリア〟
〝シチリア独立運動〟
と言った感じで、これらのシチリアを構成する文化や歴史を通して、シチリアマフィアが現代的な組織に生まれ変わるまでを描いている。
シチリアの歴史について、ここまで詳しく分かりやすく解説されている本はなかなかないので、ぜひ読んでいただきたいところ。
虐げられてきたシチリア
本書の込み入った内容を少しだけ、噛み砕いて紹介致します。
シチリアマフィアは土地を持つ貴族に取り入り、農民から金を巻き上げる所から活動をスタートさせた。
具体的には、貴族が広大な土地を土地借受人に貸し、土地借受人は土地を細分化して貧しい農民に貸す。
当然、孫請とも言える農民はあらゆる面で搾取の対象となった。
ここに登場する土地借受人が、シチリアマフィアの原点と思われます。
マフィアは暴力で土地をしっかりと管理し、影響力をまして行くのでした。。
しかし、このマフィア達もムソッリーニに弾圧され、言わば〝虐げられる側〟を味わうことに。
その後は再び、勢力を盛り返したマフィアでしたが、彼等はサルヴァトーレ・〝トト〟リイナやルチアーノ・リッジョ、トンマーゾ・ブシェッタなど進興マフィアに圧され、遂には消えて行く。。
本書の重要なポイントは、シチリアは虐げられてきた歴史を持つというところ。
アメリカマフィアは、故郷からアメリカに移住し、かなり厳しい生活を強いられ、差別され、いわば〝虐げられてきた側〟であるのに対して、シチリアマフィアは〝虐げてきた側〟。
この立場の違いが、麻薬に反対派と賛成派の対立の一因となったり、シチリアマフィア内部の旧派閥と、虐げられてきた階級出身の〝新興マフィア〟の対立に繋がったと思われる。
また、この極度に虐げられた歴史から現在にも多くの住人の中に〝オメルタ〟が残っている。
〝余計な事を話せば災いを招く〟〝余所者は信用出来ない〟といった価値観は今も健在で、その証拠に私が取材を申し込んでもなかなか受けて貰えなかった。。
日本人ならお金を貰えるとなれば少なからず、インタビューを受ける人もいそうであるがシチリアではほぼいないのである。
結局、シチリアのマフィア博物館の方にオンラインでお話を聞いたので、後日お伝え致します。
残念な所
本書は1988年に書かれたものであるので、サルヴァトーレ・リイナや〝ファルコーネ爆殺〟の話は登場しない。
また、情報が古い32年前に書かれたという事もあり〝間違っている〟と言わざる負えない箇所もいくつかあります。
もう1つ残念なのは、言葉の違い。
レベル→レヴェル
リッジョ→リッジオ
カモッラ→カルモラ
などなど、現在、一般的となった言葉とは少々異なる発音で書かれているため、少々読みづらいです。
よく本屋さんで見かけるくらいに人気の作品だけに、この辺りの細かな修正などしてくれたらなぁと思ってしまいます。。
とは言え、面白いのでオススメです!