バグジー射殺事件の謎

バグジー射殺事件の謎

バグジー射殺事件の謎

1947年6月21日、新聞各紙は、ベンジャミン・バグジー・シーゲルの射殺を一面で報じた。

「全米一のギャング死亡」と報じたタイム誌の編集長はこう振り替える。

「ビバリーヒルズの邸宅でのベンジャミン・バグジー・シーゲル殺害事件は、すべてを兼ね備えていた。全てをね」

殺害事件の全容

バグジー・シーゲル

殺害される二日前の6月20日、早朝。

バグジーは既にロサンゼルスに到着していた。

彼は、1946年12月26日にオープンしたフラミンゴカジノと、3月1日にオープンしたホテルの建設に成功し、利益を上げ始めていた。

しかし、建設費の未払いがまだ残っていた。

その為、バグジーは常にイライラしていたという。

バグジーは愛人ヴァージニア・ヒルの為にと、ビバリーヒルズのリンデン通り北810番地の家を借りていた。

彼女は、何度も喧嘩をしては、パリに逃げていた。

そしてこの日も。

賃貸契約はもうすぐ切れるので、バグジーは荷物をまとめに来ていたのだった。

また、フラミンゴの広報担当、ポール・プライスや弁護士のジョー・ロスと宣伝キャンペーンについて打ち合わせをする予定だった。

そして何より、娘のミリセントとバーバラが、ロサンゼルスで休暇を過ごすことになっていた。

バグジーは、8月に妻のエスタと離婚しており、ニューヨークから列車で来る娘たちに会うのは、10月以来のことだった。

その夜、シーゲルは友人のアレン・スマイリー、ヒルの弟チック、チックと結婚する予定のヒルの秘書ジェリー・メイソンと夕食に出かけた。

スマイリーは皆をノース・リンデン・ドライブの家に送り、彼とバグジーはソファでくつろぎ始めた。

後にスマイリーはこう話している。

「バグジーは新聞を読み飛ばす勢いで読んでいた」

それからメイソンとチックは2階に上がった。

バグジーとスマイリーは、右側の窓の外に誰かが立っていることに気づかないまま、おしゃべりしていた。

窓の外のトレリスに30口径の軍用カービンを置いてあった。

さらに銃口は、バグジーから3メートル足らずのところにあったのにだ。

午後11時少し前、犯人は9発の弾丸を発射。

1発がシーゲルの鼻梁に当たって左目をつぶし、もう1発が右頬に、2発が胸に命中した。

他の弾はシーゲルの後ろの壁に当たった。

そのうちの1発がスマイリーの上着を貫通したが、彼にケガはなかった。

彼は後に、警察に「ガラスが砕ける音がして、身をかがめた。何発撃たれたか分からないが、バグジーを見ると、ほとんど受けていた」と話している。

また、銃声を聞いて通りに飛び出した近所の人たちが、急いで走り去る車を見ている。

チックはすぐに通報し、数分後には警察が現場に到着した。

地方検事の発表

初期の捜査を指揮したロサンゼルス郡副地方検事アーネスト・ロールは、記者団にこう発表した。

「彼を邪魔に思った人が100人はいたかもしれない 」

そのため、記者たちはバグジー殺害の動機について、さまざまな疑問を投げかけた。

麻薬の取引で悪い相手を裏切ったのか

競馬の通信社を支配するための闘争で悪い相手を裏切ったのか

フラミンゴを完成させるためにマフィアの金を使いすぎたのか

それともマフィアの金をかすめ取ったのか

はたまたヴァージニア・ヒルにひどい仕打ちをしたために、誰かに殺されたのだろうか。

ロールはそれに答えず、「犯人は特定されないかもしれない」と締めくくった。

事件の謎

過去70年の間、ギャングスター愛好家、ジャーナリスト、歴史家、伝記作家は、この犯罪について様々な解決策を提示してきた。

暗殺の最も根強い説明の一つは、「ハバナ会議説」。

キューバのハバナで開かれたマフィアのボスたちのサミットに関するものである。

この会議が1946年12月に行われたか、1947年2月に行われたかについては意見が分かれている。

確かなのは、チャーリー・”ラッキー”・ルシアーノ、フランク・コステロ、マイヤー・ランスキーなどが出席していたこと。

そこでマフィアのボス達は、バグジーが自分達の金を浪費したり、盗んだりしたため、排除することを決めたと言われている。

この説には続きがある。

マフィアのボス達は、バグジーの殺害を決定した後、ロサンゼルスのマフィアのボス 、ジャック・ドラグナを指名して実行を依頼した。

そしてドラグナは3人の殺し屋に殺害を命じたという。

一人目はフランキー・カーボ。

フランキー・カーボーン

彼は映画「グッドフェローズ」にフランキー・カーボーンの名で登場している。

二人目はエディ・カニザロ。

三人目は第二次世界大戦の退役軍人ロバート・マクドナルド。

彼はギャブルで借金を作っており、利子の代わりに殺しを命じられたという。

ビバリーヒルズ警察研究所の上級法医学専門家だったクラーク・フォッグは、著『ビバリーヒルズ コンフィデンシャル』でこう分析している。

「実際には犯人は2人だった。
最初の弾丸の衝撃でバグジーの頭は回転しただろうから、1人のガンマンがシーゲルの顔をこれほど正確に撃つのはほぼ不可能だっただろう」

これは的確な分析に思える。

フォッグさらに、こんな説を提唱した。

「マフィアのジョー・アドニスが、トニー・ブランカートとトニー・トロンビーノという「2人のトニー」を雇って、殺害させた。

動機はハバナ会議の後にルチアーノ等から依頼を受けたからだ」

次回は重要参考人の証言から別の説を分析していきます!

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