殺人株式会社の密告者
1941年11月12日、寒くて暗い夜。
かつて殺人株式会社の幹部であり、現在はアメリカ史上最も重要な証人であるエイブ・”キッド・ツイスト”・レルズは、保護拘束されているコニーアイランドのハーフムーンホテル6階から、はしごを下ろそうとしていた。
彼は、殺人株式会社のトップ、アルバート・アナスタシアをシンシン刑務所の悪名高い電気椅子に座らせることができる証言を持っていた。
そして、レルズには24時間体制で彼を監視する6人の刑事がついていたが、彼らははしごを下ろしていることに気がつかなかった。
シーツと無線機用のワイヤーで作った即席のはしごを窓から出し、片方を腰に巻きつける。
そして慎重に窓の縁に出始めた。
あまり騒ぐと見張りが来るので、なるべく静かに窓際に出る。
彼は金色の檻の真下にある5階の空き部屋へと降り始めた。
彼はゆっくりと体を降ろし始め、足で下の棚を探しながら、後にFBIの犯罪捜査官によって発見されることになる傷や痕跡をそこに残していくのであった。
そして、FBIの専門家が彼の体重を支えるには弱すぎると評価したロープが切れ、レレスは6階からホテルのテラスに落下、即死した。
その夜、ニューヨークとカリフォルニアでは、男たちが歓喜のダンスを踊ることになる。
当時、全米で最も重要なカナリアであったエイブ・レレスが死んだのだから、誰も咎めることはできない。
しかし、本当にそうだろうか？
ある人は彼を殺したと言い、ある人は事故だと言い、ある人は自殺だと言う。
しかし、確かなことは分からないし、100％確実お言えることはないだろう。
現在、誰もがレルズは殺害されたと考えているが、誰が殺害したかは正確には分からないし、今後も分からないだろう。
確かに、公式見解には様々な欠陥がある。
まず、手段から見てみよう。
“ラッキー “・ルチアーノとマフィアの裏切り者のジョー・バラキによれば、レルズは眠っているか、護衛に警察のナイトスティックで気絶させられた状態で窓から投げ落とされた。
ニューヨーク市警刑事局のボス、フランク・バルス警部もこの殺人に加わっていたという。
ポール・カビエフ著『レプケ・ブカルターの生涯』（Barricade Books, 2006年）の中で、ルチアーノはこう述べている。
「バルスに5万ドルを支払い、他の連中が罪を被る場合に備えて、もう少し金を用意しておいた。俺が聞いた話だと、バルスは部屋にいて、全部を監督したそうだ。
レルズが寝ていると、警官が叩いて気絶させた。
それから 彼を抱え上げて 窓の外に放り投げた。
彼は壁からかなり離れたところに落ちたから、ジャンプしても無理だったんだ」
作家のウィリアム・バルサモとジョージ・カルポジ・ジュニアが書いた『Crime Incorporated』（True Crime Library, 1988）という本によると、バラキはもっと大雑把だったが、同じように話したという。
そこでは、レルズは護衛に殺され、マフィアたちは、この事件が起こることを知っていたと述べたと引用されている。
検事補のバートン・ターカスは、殺人株式会社の元ボス、ルイス・レプケ・ブカルターを含むマーダー・インクの多くのメンバーを逮捕した人物として有名だが（オドワイヤー検事は喜んで自分の手柄にした）、この事件を未解決の殺人事件と断定している。
「エイブ・レレスはあの窓から放り出されたのだ。誰がやったかわからないが、彼は放り出された。彼はベッドシーツと針金に命をかけていたわけではないことは知っている」
法医学的証拠も、窓の縁にあるレレスがつけたかどうか分からない印を除けば、一致しないようだ。
その場しのぎのハシゴは、FBIの専門家に調べられ、その耐荷重は130ポンドとされた。
それはレルズの実際の体重よりはるかに軽いものであった。
しかし、FBIのウェブサイトでは、レルズの死は自殺とされている。
ここで、もう一つの矛盾を調査する必要がある。
もしレルズが逃亡を図っていたのなら、なぜFBIのウェブサイトは彼の死を自殺としているのか？
もし彼が自殺しようとしていたのなら、なぜわざわざ縄ばしごを使う必要があるのか？
なぜ通常の自殺のように窓を開けて飛び降りないのか？
そもそも、仲間を裏切り、警察に寝返ったのに、なぜ自殺するのか？
まったくもって意味不明である。
また、垂直に登っているクライマーは、垂直に落ちるものである。
レレスは6階から落ちただけなのに、ホテルの壁から9フィートも離れたところに着地したという。
跳ね返るもののない切り立った壁から垂直に落ちる人間としては、驚くべきドリフトであるように思える。
次回は動機について考察していきます。
