ダニエル・キナハンの犯罪組織
重要国際犯罪組織指定
財務省はダニエル・キナハンが率いるアイルランド系ギャングを重要国際犯罪組織指定。国務省も彼の逮捕につながる情報に対して500万ドルの報奨金を出すと発表した。
ダニエル・キナハンはボクシングのプロモーターとして知られる人物で、過去には元ヘビー級チャンピオンのタイソン・フューリーとも繋がりを持っていた。
だが、その裏の顔はドバイに本部を置くアイルランドギャングのボスであり、殺人、麻薬、銃の密売、マネーロンダリングに関係しているという。
アイルランドとイギリスでは20年以上にわたって悪名高いキナハン一派を捜査していた。
そして、ついに米国財務省にその事実を認めさせ、重要国際犯罪組織に指定させることに成功した。
指定されたことにより、ダニエルとその父クリストファー・シニア、弟クリストファー・ジュニア、その他4人のアイルランド人と3つの企業が保有する米国内のすべての銀行口座と財産が凍結される。
財務省のテロ・金融情報担当次官であるブライアン・E・ネルソン氏は、アイルランド、英国、スペイン、アラブ首長国連邦などと協力し、あらゆる手段を用いて組織を追い詰めると語った。
また、今回重要国際犯罪組織に指定した理由についてもこう話した。
「キナハンの犯罪組織は、コカインを含む致死性の麻薬をヨーロッパに密輸し、国際マネーロンダリングの役割を通じて、合法経済全体への脅威となっている」
彼らは社会的弱者を食い物にし、活動する国に殺人を含む麻薬関連の犯罪と暴力をもたらす。
一方のダニエル・キナハンは、組織犯罪との結びつきを否定した。
キナハン一派の歴史
彼は否定したが、キナハン一派の犯罪史は誰もが知るものとなっている。
キナハンの父クリストファーは、1990年代後半から2000年代初頭にかけてダブリンで犯罪組織を結成。
その後、コカインやヘロインの密売、マネーロンダリングなどの罪でアイルランド、オランダ、ベルギーの刑務所に合わせて12年服役している。
2014年には麻薬組織ハッチギャングとの抗争が勃発。
抗争のきっかけはクリスティがゲイリー・ハッチをヒットマンに殺害させたことだった。
ハッチとキナハンは元々、友人であったが、ある時から彼はハッチが警察の犬ではないかと疑うようになったという。
しかし、殺害後にハッチは警察と繋がっていなかったことが明らかとされた。
こうして始まったハッチ・キナハン戦争はしだいに激化。
2016年、ハッチ一派は、キナハン一味が勢揃いするボクシング会場にヒットマンを送り込んだ。
ヒットマンの数人は警察官に、1人は女性に扮していたという。
大勢の観客がいる中、ヒットマンたちが発砲。
キナハンの部下一人を殺害、3人を負傷させた。
その場にいたダニエルは、窓から飛び降りて難を逃れていた。
数日後、キナハンは復讐のため4人のヒットマンを派遣。
ハッチの弟でボスを継いだエディ・ハッチ射殺させた。
さらにハッチギャングのメンバー、親戚、仲間18人を次々に殺害。
ハッチギャングは壊滅した。
事態を重くみたアイルランド警察はキナハン一派の取締りを開始。
キナハンのメンバーは逮捕を逃れるためアイルランドやアラブ、イギリス、スペインに拠点を移した。
ボクシングとキナハン
そんなキナハン一派を継いだダニエル・キナハンは長年にわたり、マネージメント会社MTKグローバル・エージェンシーを経営してきた人物だ。
主要なボクシング大会には常に彼の影があったという。
ラスベガスに拠点を置くトップランク社の創業者兼CEOであるベテラン・ボクシング・プロモーターのボブ・アルムは、キナハンと関係のあった人物だ。
アルムはキナハンについてこう振り返った。
「私に電話をかけてきて、長い間会話したのを覚えている。
彼には子供がいて、他のことからは手を引きたいと言っていた。
彼は私に、『ボブ、私は人生で悪いことをいくつかした。それは認めるよ。でも、もうそれとは関係ないんだ。人生をきれいにして、真っ当なビジネスマンになろうと思っているんだ」と言いました。
彼が以前やっていたかもしれないことに、私は一切関わっていなかったし、彼は何もしていないと話していたんだ。」
こうした言い分を信じて取引を始めたアルム。
だが次第にキナハンの凶暴な一面が垣間見えるようになり、縁を切ることを決めたという。