暴かれたマフィアの入会式part2
マフィアの入会式part2
ゴッドファーザーの世界
マリオ・プーゾの小説『ゴッドファーザー』に描かれたマフィアの入会式について、フランク・カラブレーゼ・シニアは、ジュニアに「非常に真実に近い」と話したことがあるそうだ。
「それは映画の中の話だと思っていたよ」と息子は答えた。
そこで、フランク・シニアはこう答えた。
「あの本を書いた人は、父親か、祖父が、あるいは組織の中にいた人なんだ」
それからフランク・シニアは、弟のニコラスと一緒にメンバーになった時の事を話した。
「指を切られ、血を流され、絵を燃やされ、手のひらに落とされた。
聖なる絵だ。
彼らは見ている。
炎を怖がるそぶりを見せなかったかどうか。
私が何よりも後悔していることがある。
聖画を手に持って燃やしたことだ。
困ったもんだ」
ある日の出来事
公判で提出された証拠によると、シカゴでの入会式は次のように描かれている。
1983年10月9日の日曜日、ニックとフランクのカラブレーゼ・シニア兄弟は、クック郡のマンハイム・ロードの西にあるルーズベルト・ロードの閉店したレストランまで一緒に車で向かった。
運転手はジミー・ラピエトラ。
当時、彼はカラブレーゼ兄弟が所属していた二十六番街クルー、別名チャイナタウンクルーのリーダーであった。
車にはディーラーナンバーがあり、アウトフィットの関連会社から持ち去られたものだった。
この日の出来事はすべて、秘密裏に計画された。
とはいえ、もしラピエトラが車を運転しているところを特定の関係者が目撃していたら、疑われるのは当然だ。
1940年代にティート・バタリヤとマーシャル・カイファノが ティートの運転する車で検挙された。
シカゴ警察が車内に隠された小さな武器を発見した。
以来、アウトフィットの幹部は、絶対に車を運転しない。
ましてや書類上所有しているだけの車を乗り回したりしなかったはずだ。
彼らはレストランの駐車場に車を停め、乗員は降りてレストランに向かった。
フランク・シニアとニックは厨房に入った。
そこで待っていたのは、ジミー・マルチェロ、トニー・ジッツォ、ロッキー・インフェリス、ジョニー・パッジ・マタッサ、アルバート・トッコ、その他、アウトフィットのいくつかの組の代表者たち。
アウトフィットのシカゴハイツの手下であるアル・トルナベーネは、各入門者を一人ずつダイニングルームに案内した。
それぞれ別々に、一人で受けることになる。
アルが一人の新入りを連れて厨房を出て行く間、他の者は待っていた。
やがてニック・カラブレーゼがダイニングルームに連れてこられ、シカゴ・アウトフィットのボス、ジョーイ・ダブ・アイウッパが座っているテーブルの前に立たされた。
テーブルには、さまざまなクルーのカポが一緒に座っていた。
グランド・アベニュー・クルーのカポであるジョーイ・ザ・クラウン・ロンバルドは、その日、実刑判決を受けていたため、出席していなかった。
出席者のなかには シカゴ・ハイツのドミニク・”トゥーツ”・パレルモもいた。
メルローズ・パークのサム・カルリシはマルチェロとジッツォを、ラッシュ・ストリートのヴィンス・ソラノはマタッサとフランク・ベルモンテを連れて来た。
エルムウッド・パークからはジョン・”ノー・ノーズ”・ディフロンゾが一人で来ていた。
ニックはそこに立ち、ジョーイ・ダブズとカポ達に向かった。
テーブルの上には銃とナイフがあり、ろうそくも立っていた。
アイウッパは聖人の絵が描かれたホーリーカードを手にした。
彼は立ち上がり、テーブルを回ってニックが立っているところまで歩いてきた。
そしてカードに火をつけて、ニックの開いている手の上に落とした。
ニックは燃えているカードを持ち、無表情になろうと努力した。
熱くなった手のひらを体から切り離し、絵が手のひらの上で炎に包まれ、徐々に強くなる焼けつく感覚を無視するように努めた。
アイウッパは、「そろそろ誓いを立ててください」と言った。
彼は次のことを3回繰り返すように言われた。
「もし私が兄弟を見放したら、この聖なる絵のように地獄で焼かれますように」
そして、カードが取り出された。
アイウッパがピンでニックの指先を刺すと、皮膚から一滴の血液が生じた。
彼の血は、もはや自分のものではないと言われた。
アイウパとカポーは彼を祝福し、ラピエトラは彼の手を握った。
兄弟は2日前に呼び出され、ブリッジポートのアンジェロの家に行くように言われていた。
兄弟は地下室のテーブルで、アンジェロが二人を推薦したことを告げられた。
二人の返事は「はい」だった。
ニックは、もし彼らが「ノー」と言ったら、地下室で何が起こったのだろうかと考えた。
アウトフィットのために1件以上の殺人を犯した者だけが招かれた。
生粋のイタリア人でなければならない。
一生を賭けることになる。
また、それなりの身のこなしも要求された。
part3へ続きます
