モーダリッツとキーフォーヴァー委員会
モーダリッツとキーフォーヴァー委員会
映画「ゴッドファーザー」のモー・グリーンの名前のモデルとなっているマフィアのモー・ダリッツ。
彼が公聴会で話した内容についてお届けしていきます。
モーダリッツの名言
キーフォーヴァー委員会の委員長であるテネシー州上院議員のエステス・キーフォーヴァーは、禁酒法時代の酒の密売で得た収入についてダリッツに尋問を行った。
それに対してダリッツは「もしあなたがそれを飲まなかったら、私はそれを密売しなかっただろう」と答えたという有名なエピソードがある。
しかし、公聴会の公式記録にはこの名言は記載されていない。
ダリッツは実際には何と発言したのでしょうか?
公聴会前夜
1950年5月26日からキーフォーヴァー委員会はクリーブランド、セントルイス、マイアミ、ニューオーリンズ、シカゴ、デトロイト、カンザスシティ、フィラデルフィア、ラスベガス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンなど全米を回って公聴会を開催。
そして1951年2月28日、ロサンゼルスのダウンタウンにある連邦ビルでの公聴会にはモー・ダリッツが召喚されることに。
当時ダリッツはクリーブランドのサム・タッカー、モリス・クラインマン、ルー・ロスコフを部下にしていた。
ダリッツ達はラスベガスのデザートインリゾートの株式を75%保有していた。
その経緯はマフィアらしいものだった。
デザートインは元の所有者であるウィルバー・クラークがダリッツ達に650万ドルの投資を受け、1950年に完成、オープンした。
しかし投資の代償として、クラークはデザートインを失った。という具合である。
キーフォーヴァー委員会はこの事実と禁酒法時代に四人が行ったカナディアンウィスキーを密輸した事を問いただすためにダリッツに召喚状を送ったのだった。
ダリッツは出廷を拒否しようとしたが、来なければ逮捕すると脅され、渋々それに応じるこにした。
公聴会当日
キーフォーヴァーの狙いはダリッツ達が投資した金の出処を明らかにする事だった。
一方、公聴会の直前ダリッツは雲行きが怪しいと感じ策を講じることに。
弁護士のチャールズ・カーを伴って、時効の範囲内である6年以上前の違法行為を自白することに同意した。
そこでキーフォーヴァーは、ダリッツが酒密輸から得た収入について尋ねた。
するとダリッツは酒の密輸により95,000ドルを稼いだことを明かしたのだが。。
公聴会の記録
議長:さて、ダリッツさん。6年以上前、あなたの仲間は酒密輸で財を築きましたね。
これについては詳しく説明しませんが、他の仲間が既に教えてくれたので知っています。
あなたはそれで稼いだ金をラスベガスに投資しましたか?
ダリッツ氏:そうですね。しかし稼いだのは僅かですから、投資の全てが違法なお金ではありません。
議長:全てではないことは理解しています。
ここ数年はかなりのお金を稼いでいるようですね。
ある投資で得た利益は次の投資に回していくと思います。
あなたは投資を始めるために、違法な投資を行いましたね
ダリッツ氏:いいえ、上院議員。
会長:これらのラスベガスのカジノに投資するには、どこかからお金を持って来なければなりませんよね?
ダリッツ氏:上院議員、私は禁酒法後、ランドリー業に参入していました。
私の本業はランドリー業で、ずっとそのビジネスに携わってきたのです。
このように答弁したものの最終的には、ダリッツは酒の密売で莫大な金額を稼いだ事を認めてしまう。
「私はその時代に多くのお金を稼ぎました。はい、上院議員。」
しかしこの公聴会はダリッツと仲間たちを摘発するには至らなかった。
消えた名言
「あなたがそれを飲まなかったら、私はそれを密売にしなかっただろう」
結局、有名なフレーズも、似たフレーズも公式記録からは見つからなかった。
このフレーズが存在しない理由は2つ考えられる。
ダリッツはこのフレーズを言わなかった。
もしくはキーフォーヴァーが怒りのあまり記録させなかったか。
いずれにせよ、この名言が本質を突いているのは確かである。