カーニバルマフィア
お祭りと犯罪組織の関係は世界共通である。
アメリカのカーニバルビジネスを研究しているCarnival Bizが行った世論調査によると、70%以上の参加者がカーニバルのゲームで騙されたと感じていることが明らかになっている。
カーニバルゲーム取締りの専門家であるグリン郡警察のグレン・ヘスター伍長はこう話す。
「お祭りのゲームに参加すれば95%は負ける」
カーニバルは、アメリカで唯一、違法賭博、窃盗、詐欺が許される犯罪の祭典なのだという人もいる。
日本に住む皆さんも、当たりのないくじ引きを引いた経験があるのではないだろうか。
偶然の魅力
アメリカのカーニバルで合法的に許可されているゲームは、「スキルゲーム」と呼ばれる種類のゲームだけとなっている。
これはプレイヤーのスキルによって商品を獲得できる類いのゲーム。
例えばポーカーや射的など。
対して、運によって商品が得られるチャンスゲームは違法とされている。
例えばくじ引きやナンバーズ賭博などだ。
ちなみにすべての州は、慈善団体や教会の主宰するくじ引き、政治資金パーティーのビンゴなどは合法としている。
ある専門家は「カーニバルで行われるゲームは、すべて不正に操作される可能性があります。
おとり商法、手品、マジック、物理学などを使ってゲームを不正に操作し、金銭をだまし取ることは、窃盗または詐欺の一種と見なされます。」と話す。
例えば決して揃わないピンボールマシーンやサクラばかりが勝ち続けるサイコロ賭博などだ。
しかし、だからといってお祭りの風習が無くなってしまうのも寂しいものである。
帳簿 の改ざん
1987年に出版された「カーニバル・ゲーム・マニュアル」は、カーニバル業界の不正、主に帳簿の改ざん方法を解説したもので、現在も警官たちのバイブルとなっている。
多くの場合、出店のオーナーはマフィアに出展料を納めている。
一方で、マフィアとは別に、表向きにお祭りを主宰している団体が必ず存在する。
こうした“祭り委員会”が帳簿を改ざんし、マフィア、役人、そして自分たちがピンハネした金を誤魔化しているのだ。
情報筋によると、カーニバル産業は北米だけで少なくとも年間500億ドル規模のビジネスとなっている。
そのほとんどが現金ベースの取引であるために、実際には100億ドル程度の売上しか帳簿には記されていないと言われている。
カーニバルマフィア現る
話は180度変わるが、“カーニバルマフィア”なるものをご存知だろうか。
2018年7月14日、オザーク国立森林公園の墓地で、二人の遺体が発見された。
二人は夫婦で、カーニバルの運営に関わる仕事をしていた。
一応だが、二人はまったくの堅気の人間であった。
程なくして警察はマイケル・ファウラー(54)、ラスティ・フレイジャ(35)、クリスティン・テニー(37)を殺人容疑で逮捕。
裁判記録によると、4人全員が無罪を主張し、こう話したという。
「カーニバルマフィアに脅されたんだ。協力すればカーニバルマフィアの一員になれると言われた」
彼らは携帯のSMSメッセージを通じ、全米の祭りを支配するカーニバルマフィアに夫婦の殺害を命じられていたのだ。
メッセージの送り主はカーニバルマフィアのボス フランク・ザイチク。
警察が半信半疑ながらもザイチクについて調べるとフェイスブックのページが見つかった。
警察はアカウントの使用履歴から、持ち主と思われるキンバリー・ヤンガーを逮捕。
ヤンガーは“カーニバルマフィア”なる架空の設定を作り出し、役を演じていたに過ぎないことが明らかとなった。
ヤンガーは夫婦が持っていた宝石類を奪うために、赤の他人を騙し殺害を命じていたという。
ニュースによると、警察が真相を伝えた時、ファウラーはこう言った。
「私はずっと騙されていて、自分の人生をすべて投げ出してしまった」
実際に手をくだしてはいないクリスティン・テニーには懲役5年が、他の三人には終身刑が下された。